【第58回】ロマニ語の研究や日本文化をPR🌎角悠介さんインタビュー🎤✨

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みなさんこんばんは🍉
今年の夏はたいへん暑いですが、みなさんはどうお過ごしですか??
くれぐれも体調には気を付けて、水分はこまめに取ってくださいね!!

さて、今週は神戸市外大の研究員でもあり、ルーマニアでロマニ語の研究をされている角悠介さんのインタビュー記事をお届けします🎤

人と人を繋ぐ言語を研究する事の魅力だけでなく、自分たちの文化を発信することの大切さ、留学を考えている多くの外大生へのメッセージも話してくださいました。言語や留学に興味をもつ外大生には必見のインタビュー記事です👀

インタビュアー:あったん
執筆:ももかか

角 悠介さん
神戸市外国語大学客員研究員/ルーマニア国立バベシュ・ボヨイ大学日本文化センター所長・文学部ロマニ語講師/アテネ・フランセ講師(ラテン語)/東京外国語大学オープンアカデミー講師(ロマニ語)
ルーマニア国立バベシュ・ボヨイ大学日本文化センターはこちら
角さん著書「ロマニ・コード」はこちら
著書に『ロマニ・コード 謎の民族ロマをめぐる冒険』(夜間飛行、2022年)、『ニューエクスプレスプラス ロマ(ジプシー)語』(白水社、2021年)等がある他、『不思議の国のアリス』ロマニ語訳(Casa Cărții de Știință、2023年)等の監修も務める。
あったん
あったん
本日はどうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。そうしましたらちょっと自己紹介の方から始めさせていただきます。
角さん
角さん
神戸市外国語大学外国学研究所の客員研究員をさせていただいている、角悠介と申します。また、ルーマニアのトランシルバニア地方にある国内最大・最古・ランキングトップのバベシュ・ボヨイ大学日本文化センターを預かり、ルーマニアにおける日本文化とのプロモーションや日本語教育を行っております。
角さん
角さん
専門は言語学です。日本の高校を卒業してから留学し、西洋古典学(ラテン語・古典ギリシア語)を学ぶためにルーマニアの大学に留学し、学士課程を終えた後、ハンガリーのブダペスト大学の修士課程に進学しました。修士課程でも西洋古典学を勉強していたんですけども、たまたま学外でロマ(=ジプシー)」の人たちから、彼らの言語「ロマニ語」を教わり始めました。修士課程を終える頃にはもう興味がラテン語からロマニ語の方に移っておりました。そこで博士課程ではロマニ語を研究しようと、世界で一番多くのロマニ語の話者がいるルーマニアに戻り、ロマニ語の研究を行いました。現在は日本とルーマニアを行き来しながらロマニ語を教えつつ、その間にロマの言語や文化のフィールドワークを行っております。
角さん
角さん

日本文化センターイベント時の写真

 

高校時代の留学経験

あったん
あったん
ありがとうございます。高校卒業してからもうルーマニアに留学されたってすごいですね👀それは「海外に行きたい、その中でもルーマニアがいい」と思ったんですか?
そうですね。実は昔、というか今もそうですけども、あまり語学が得意ではありませんでした。ですが外国への興味だけは人一倍強く、高校の時にはフランスに留学したいと思っていました。しかし、フランスはやはり物価が高かったこともあり、経済的に難しいということがわかったので諦めました。
角さん
角さん
ですが、どうしてもヨーロッパでラテン語を学びたいと思っていたので、ラテン語から派生したロマンス諸語が話されているフランス以外の国に留学しようと思いました。その中で当時はルーマニアの物価が一番安かったので、この国を選びました。しかし、留学生活は大変でした。
角さん
角さん
あったん
あったん
なるほど。ではルーマニアで留学してみて、生活とかに苦労されたこととかはあるんですか?
当時のルーマニアはEUにも加盟できていない状態でして、本当に貧しい国で物乞いもたくさんありましたし、あとは本当に物がなかったんですね。スーパーマーケットが街に一軒しかなく、しかもスーパーの棚はいつもスカスカでした。他にも貧しさゆえの小さなトラブルがたくさんありました。
角さん
角さん
あとはアジア人どころか外国人もかなり少なかったので、やっぱ差別問題なんかも経験しました。
角さん
角さん
あったん
あったん
そうだったんですね。周りにはやっぱり日本人とか本当にない状況でしたか?
そうですね。私が留学したバベシュ・ボヨイ大学は20年以上前から神戸大学と学術提供しており、毎年1人か2人留学生が来ていました。この他、当時はJICAの青年海外協力隊の隊員などがいました。現地で働いている邦人を含めても、私が住んでいた街の日本人の数はせいぜい数人でしたね。
角さん
角さん
あったん
あったん
それは少ないですね。日本人少ないほうがやっぱ語学としてはね、いろいろ勉強には良さそうだなって思うんですけど、逆に留学してこうすればよかったなって思うところとかはありますか?
留学して後悔したことは特にないですね。留学は自分自身や日本という国について、改めて考えてみる良いきっかけになりました。様々な文化に触れることができるので、日本の常識・非常識が地球上のごく限定的なものであることに気づかされます。そうすると、「あれもよし、これもよし」という考え方になるので、留学してから身の回りで起こる様々な物事に寛容になったかなと個人的に思っております。
角さん
角さん
あったん
あったん
すごいですね。海外に住むと価値観とかも変わるって言ってますし、ちゃんとそういういろんな文化を受け入れられるようになってくるっていうのは良いなって思いました✨
もちろん現地に行って体験することも大切です。ですが文化はことばにも強く反映されるので、外国に行く機会がなくとも外国語を勉強するだけで色々な世界が見えてくるんじゃないかなと思います。いずれにせよ、外国であれ日本国内であれ、他者を理解しようとする姿勢が一番大切ですよね。
角さん
角さん

ロマニ語の存在

 

〇ロマニ語の特徴

あったん
あったん
色んな言語を学んでいく中で違った面白さがあると思うんですけど、ロマニ語のどういったところが好きだとかありますか?
もともとの専門だったラテン語や古典ギリシャ語は「死語」なので、大概文献を読むだけでおしまいです。一方、ロマニ語は話し言葉で、あまり研究もされていません。話者と沢山関わって話すことが必要な言語なので、それまでとやっていることが正反対でした。
角さん
角さん
ロマの人は独自の国を持っていません。ヨーロッパ各国に少数民族として暮らしているため、様々な国や民族の文化的影響を受けています。ロマニ語も同じで、地域ごとに様々な言語の影響を受けているため、ロマニ語方言を理解するためには、ロマニ語だけの知識では不十分で、それぞれの方言が話されている国の言葉も多少勉強しないといけません
必ずロマニ語の基礎知識+その国の言語を学ばなきゃいけないっていうのが常にセットなんですね。
角さん
角さん
そこが大変なところでもあるんですけども、元々色んな言語を学びかじるのが好きだったので、その辺は自分に合ってるかなと思っております。また、西洋古典学で得た言語学の知識も大きく役立っています。
角さん
角さん

 

〇新たな価値観

あったん
あったん
実際にロマニ語に関する研究を始めてみて、ロマニ語族の良さみたいな感じる部分っていうのは先ほど話されてくださったことが結構通じてます?
そうですね。ロマに対する差別もあって、ヨーロッパで「ロマニ語を研究している」と言うと、ヨーロッパ人から怪訝な顔をされることがあります。欧州でロマと積極的に関わろうとする人は多くありません。
角さん
角さん
それゆえにといいますか、研究者の数も少ないので、実際ロマの人たちと触れ合ってみると新しい発見が色々とありますね。私がルーマニアに留学したとき、ヨーロッパと日本の違いに驚いたのを覚えています。しかし、ロマの人たちはヨーロッパに住んでいながら、ヨーロッパの大多数の民族もびっくりするような異なった考え方や世界観を持っていることがあります。その辺は面白いですし、何かハッとすることが多いですね。
角さん
角さん
例えば、我々は一日を24時間に分割し、活動期間である朝・昼・晩に食事を取る生活に慣れてるじゃないですか。ですが、彼らにとって「1日」は「暗い時」と「明るい時」の組み合わせに過ぎませんし、そもそもかつて馬車で厳しい放浪生活を送っていたので、決まった時間に食事もしていませんでした。食べられるときに食べるのが精一杯です。自然と共に生きていた彼らには時間、週、月、年、あるいは「肩書」といった、人間が定めた「区切り」や「定義」に対するこだわりがなく、これが彼らの言語「ロマニ語」にも反映されています。
日本で培った常識を全部一旦捨て去って自然の中にポツンと置かれたとき、自分は何を考えるのだろう。ロマニ語研究をしていて、そんな疑問を突き付けられるような体験を多くしましたね。
角さん
角さん
あったん
あったん
やっぱり言語をただただ学ぶだけじゃなくて一緒に生活してみて分かることっていうのはあると思うし、価値観を知ってより言語が好きになりそうだなっていうのを聞いてて思いました。角さんの研究が今後もこの私達にいろんなことを伝えてくださるんだなっていうのは、今思いました。ありがとうございます。

言語を残すために

あったん
あったん
角さんにとって、どういったところが、言語研究で魅力であったりとか楽しさがあるのかを聞いていいですか?
そうですね。私は言語研究の中でも記述言語学」といって、実際に現場に行ってそこで話されている言語を記述する作業をしています。ロマの言語にはまだ記述されてない方言がたくさんあるので、話者が生きているうちに記述して、記録に残しておきたいと思ってます。
角さん
角さん
ルーマニアには世界で一番多くのロマニ語話者がいます。伝統生活が保てる環境があるというのは良いことです。しかし、これは彼らがルーマニア社会にうまく適合できていないという悲しい一面も表しています。貧困問題なども絡み、戸籍がない人や義務教育を受けられない人もいます。社会を変えていくために一番重要なのは、やはり教育です。
角さん
角さん
しかしルーマニアの学校では基本的にルーマニア語で勉強しないといけないので、1言語がロマニ語の子供たちは学校に行ったときに若干不利になってしまいます。学校で少しでも自分の子供が苦労しないようにと、自分の子供にルーマニア語だけで話し、ロマニ語を覚えさせないようにするロマの家庭が増えてきてます。そうなると、ロマの言語がこの先失われるのが目に見えているので、私は心配しています。
角さん
角さん
あったん
あったん
これはかなり難しい問題ですよね
そうですね。社会的地位向上と伝統文化の消失が、同時並行で起こっているので…
角さん
角さん
彼らの文化も保たれながら社会に取り込むというか、社会的地位が上がるような、そういった政策が望ましいんですけども簡単ではありませんしかしながら「ロマニ語」は30年ほど前に小中学校の正式な科目の一つとなりました。この言語政策が一つの歯止めにはなっていると思います。
角さん
角さん

角さんの願い

あったん
あったん
そういった社会の状況もありながら角さんはどんな思いで今活動されてるかってところ聞いてもいいですか?
先ほどの話と重なりますが、自分たちの文化にも誇りを持ってもらいつつ守ってほしいなっていうのが一番の願いですね。私みたいな外国人がロマニ語を学ぶ姿勢を見せることって彼らももう少しその自分たちの言葉というものに誇りを持ってくれたらいいなというふうに思ってます。
角さん
角さん
あったん
あったん
それは本当に思いますね!やっぱり私達も日本語を他の国の人がすごいすきで研究してくださってるっていうのがめちゃくちゃ嬉しい気持ちになるし、もっと日本の良さを伝えたいっていう気持ちにはなると思うので

日本では気づかなかったこと

 

〇故郷の知識

あったん
あったん
これまではいろんな経験をされてきたと思うんですけど、一番やりがいや気づきがあった活動はありましたか?
そうですね。外国の文化や言語を学ぶために外国に留学しても、外国の人は私たちを常に日本人として見ています。このため、留学生は皆自然と日本の代表になります
角さん
角さん
留学先では日本の文化について必ず色々聞かれます。今は大学の日本文化センターを預かっており、責任をもって日本の文化や歴史について相手に伝えなければいけない立場にありますが、若干苦労しています。これまで日本のことをあまり勉強してこなかったので、聞かれても答えられず、恥をかくことがありますね。
角さん
角さん
留学先の文化を学ぶことはもちろん大事ですが、留学する前に日本のことをきちんと勉強することが意外と大切だったのだと、留学してから気づきました。
角さん
角さん
あったん
あったん
なるほど、確かにあんまり日本にいると深く考えないことを外国では突っ込まれる場合もありますからね🤔

 

〇日本文化は危機的状況!?

あったん
あったん
外国の方が興味を持ってくれる日本の文化とかってあるんですか?
悲しいことに、日本文化の人気は昔ほどありません。私の大学には20以上の外国文化センターがあります。文化紹介や言語教育を通じた国のプロモーションは大きな効果がありますので、各国政府はセンターに積極的に資金を投入します。一方、日本政府はここにお金をかけません。うちの大学で政府の後ろ盾がないのはアフリカ文化センターと日本文化センターくらいなものです。ボランティアによる活動には限界があります…  😥
角さん
角さん
アジアの話をすると、やはり韓流ドラマやK-POPの人気がものすごいです。というか、数年前から完全に一定の地位を得ています。今は日本語よりも韓国語の方がずっと人気があり、韓国語学科に入れなかった人が仕方なく妥協して日本語学科に入る時代になりました。
やはりもうちょっと日本政府が日本文化のプロモーションに力を入れてくれたらいいかなと思います。唯一、日本人気を繋ぎとめているのがアニメだけなんですが、アニメも最近他の国に株を奪われかねないんじゃないかと思っているので、日本の方々にはもう少し危機感を持ってもらいたいなと思っています。
角さん
角さん
あったん
あったん
そうだったんだ!なかなかそれって日本にいると気づけないことでした。なんか勝手に日本語は何か人気なのかなっていうふうに思ってしまってたんで、実際のことを聞いてびっくりしてますね😯
日本人が思ってるほど外国の人たちは日本のことを知りません。興味がなければ知ろうともしません。やはり情報や文化はこちらから積極的に発信しない限り普通は興味を持ってくださらないので、「日本は大国だから何にもしなくても興味持ってくれるだろう」と勘違いをしていると文化外交負けします。
角さん
角さん
あったん
あったん
確かに何か私達からもう発信していく姿勢っていうのは本当に何か大事ですね💭せっかく魅力があるのにそれを発信しなければ伝わらない部分とかも多いのかなっていうのもあって…日本もね魅力がないわけでは全然ないと思うのでむしろあるからこそ伝えていきたいって私は思いましたね。

今後の展望

あったん
あったん
今日結構いろんなお話をしててめちゃくちゃ嬉しいなと思うんですけど、角さんは色んな経験されてるので、何か今後の展望などあればぜひ聞きたいなって思います。

 

〇著書『ロマニ・コード』

ロマ関係の話ですが、最近新しいプロジェクトを始めました。昨年出版した『ロマニ・コード』というエッセイにも一部書いてありますが、ロマ民族の棒術が唯一ハンガリーに伝わっています。これもほぼ失われつつあるのですが、これを受け継いでるお爺さん見つけたんですね。でも、その方もお年寄りで、これという後継者もおらず、世界で唯一の棒術も間もなく絶えるだろうというところに来ています。
角さん
角さん

角さん著書『ロマニ・コード』

ロマの棒踊り

そこで、プロの写真家にお願いし、おじいさんの棒術を写真に収めてもらい、私が棒術に付随するロマニ語の歌を記述するプロジェクトを始めました。
角さん
角さん

 

〇日本とルーマニアを繋げる

今度は日本の話ですが、バベシュ・ボヨイ大学日本文化センターは在外公館と協力しルーマニアにおいて日本のプロモーションを行うだけでなく、日本でもルーマニアのプロモーションを行っています今は複数の姉妹都市関連のプロジェクトにも携わっています。
角さん
角さん
ロマ研究にせよ、日本文化センターの活動にせよ、やはり全ての活動は留学がきっかけになってますし、活動を行う際に外国の人たちとスムーズにコミュニケーションが取れるのは、やはりことばを勉強したからだと思います。外国語は少し知っているだけでも相手の懐に飛び込めるとても便利なツールなので、いくら勉強しても困ることはありませんね
角さん
角さん
あったん
あったん
それは本当に思いますね!英語でも毎回学びがいっぱい多いので、それがどの言語にも通じる部分で、面白さでもあるかなって

ロマニ語オリンピック

 

日本文化センターイベント時の写真

留学を考えている人へメッセージ

あったん
あったん
では、これから留学を考えてる人や、今迷ってる人とかにぜひ何かメッセージがあれば教えていただきたいなというふうに思います🛫
もし留学に躊躇している方がいたら迷わずに留学してほしいというのがまず一つです。あとは、これは留学先や専門、必要な取得単位にもよりますが、留学中は通学に重点を置くべきではありません。田舎へ行ったりとか、友達の実家に泊めてもらったりだとか、授業以外の活動をたくさん経験するのが留学の醍醐味です。私もルーマニアで日本人の留学生のサポートをしていますが、「とにかく現地の人とたくさん交流してください」とアドバイスをするようにしています。
角さん
角さん
極端なことを言えば授業だけならオンラインでもできてしまいます。留学で求められているのは、それ以外の部分ですね。授業と授業の合間、放課後、そして休日、そこに留学の意味があります💭
角さん
角さん
あったん
あったん
ありがとうございます。そういうお言葉をいただけてなんかより留学に興味出る人が多いんじゃないかなって思いますね。
あったん
あったん
勉強プラスアルファのことを学んでいくっていうところ、やっぱり感覚的なところっていうのは、行かなければ絶対感じないものだなっていうのを今日のお話を聞いててもやっぱり感じたので👂

最後に…

ここまで読んでいただきありがとうございました!
KCUFSプラスの運営する当サイトKCUFS+では、これからも様々な活動に取り組む外大生のインタビュー記事を掲載していきます!
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