【第17回/前編】模擬国連2022年世界大会事務総長補佐・ヒキタキーシャさんの想いに感服!
2021.06.25 / 最終更新日:2021.12.16
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模擬国連とは
簡単に言うと、参加者が担当国(出身地とは異なる国)の外交官になりきり、国連の会議や国際会議のシミュレーションを行う活動。人権や環境など多岐にわたる国際問題が取り上げられ、それらの解決への合意形成を図るにあたって実際の国際問題や国際政治の仕組み、担当国の歴史や政策などをくまなくリサーチし、多様な視点で世界を捉えること、そして議論の場での交渉力をはじめとした幅広い能力・資質が必要となってくる。
今回の神戸市外大で輝く ” きみ ” は、 そんな模擬国連の活動に KCUFS MUN Community の一員として 1 年次から尽力し、 2022 年 11 月に 神戸市内で開催予定の模擬国連世界大会( National Model United Nations=NMUN )では 事務総長補佐としてこの国際的な一連の会合に携わる国際関係学科 3 年、ヒキタ キーシャ ロレーヌ サントーヨさんです。
なぜ模擬国連を?! 日本社会に根深く残る「格差」が関係?
まずは、模擬国連に力を入れていこう!と思ったきっかけ を教えてください。
高校生の頃から神戸市外大で模擬国連の活動に取り組みたいっていう想いがあって、
というのも、私自身がフィリピンと日本のハーフかつ日本国籍ではないということもあって、 移民や人権に興味を持った ことが大きいですね。
そうしたバックグラウンドを持つことによって国内で生きにくさを感じる場面 っていうのはやはり増えてしまうのでしょうか?
例えば、当時暮らしていた徳島でも外国人は簡単に家が借りられない、みたいな話は珍しいことではなく て …
生活する上であからさまな格差 が生じてしまっている、と…
これは私の実体験に基づくんですが、外国籍であることで法制度的に不可能なことも多くってかなり苦労 したり、アイデンティティの葛藤 なども…
制度の面でも、煩雑な手続きや選択肢の制限 といったことを強いられ、自分は「外国人」 なのかと思い知らされるわけですか。複雑な心境ですよね…
そうですね…こんな風に社会的・文化的背景が一般家庭とは異なる ということに加え、もしひとり親家庭で育つ場合、より低所得となってしまうような事情が子どもにも少なからず影響を与えてしまうんじゃないか って問題意識を抱いて。
格差や悩み が連鎖 してしまうかもしれない社会の在り方への疑問 が生まれたんですね。
そうそう。そして、今の日本で起きているこの問題に対して、自分の力でできることは? って考えたことがきっかけで、 外大で模擬国連の活動を通して解決策を探ってみる、っていう進路を選択したんです。
国籍が大きな壁 となってしまう根深い日本社会の課題に対して、諦めずアプローチ していくその姿勢がまさに国際関係学科の鑑です!
新人時代を振り返る 慣れないタスクに苦戦も … 先輩から教わったのは、〇〇力
とはいえ、1年目はやはり初めての模擬国連ということで戸惑いや苦労もあったのでは ?
まだ明確な答えのない議題に対して方針を理路整然と示すために必要なのが、入念な基礎情報のインプットなのですが、国際情勢や大使を務める国のデータを収集し、それらに基づいて文書(リサーチペーパー)を作成することにかなり苦戦 しました…
リサーチの仕方もわからず英語力にも不安を抱えていた当初は、リサーチペーパーを埋めることもままならなくて … しかも授業に関することは 全て英語で 行わなければなりません … 模擬国連の活動に取り組む時間は常に腹痛に襲われていました ( 笑 )
なんと…とんでもないところへ来てしまった…という感覚でしょうか。そんなハイスペックさが求められる集団の中で、先輩方の姿勢から学んだことは?
ズバリ、リサーチ力やネゴシエーション(交渉)力の基礎となるスキルを身につけていく過程での忍耐力 ですね(笑)
「耐」える力 、ですか…タスクをこなせるだけの強さを身につけていくという感じ?
その通りです。会議本番に向けてペアで準備を進めていくんですが、パートナーの先輩や各ペアについてくださるメンター(指導担当)の先輩方の手厚いサポート を受けて少しずつリサーチや交渉ができるように。
リサーチの面では、Googleや国連の公式サイトでどういう風に記事や成果文書を見つけて読んでいくか 説明していただいて、一緒に取り組んだり、
そしてネゴシエーション力を鍛えるため、議題に対する提案を論理的に説明できるよう自信を持てるようになるまで何度も練習をともに していただきました。
2019年11月ドイツ大会にポーランド大使として参加。ペアの先輩と本番前に決議草案の確認と話し合い。
右も左もわからない後輩にしっかりと寄り添い、チーム一丸となって議題に取り組む …先輩の姿が光り輝いて見えたでしょうね…
本当に!先輩方は「すごい方々」でいつか私もなりたいって背中を追いかける存在 ですね。
先輩方から受け継いだタスキを後輩に引き継いでいく ことが模擬国連コミュニティへの恩返しにもなるのかなって思ってます。
はぁ、素敵…こうして連綿と先輩武勇伝は続いていくんでしょうね!
試行錯誤はまだまだ続くが … ” 成果を出す ” ための心得とは?
ただ、そんな学年を超えた刺激の場である模擬国連コミュニティの一員として活動を進めていく中で、落ち込む場面も出てきたり?
模擬国連の活動を始めてから、自分の弱みは「空回りしてしまうこと」だって感じることが増えました 。頑張っているはずなのに他の人には思ったよりもその努力が評価してもらえないこともあって、それがとても悔しかった…。
でも、そこで自分なりの努力の結果と実際に求められていたことには違いがあったのかなって気づかされて。何が求められているかを理解してそのポイントを踏まえながら丁寧に返すことを意識するように 変わりました。
悩みを抱えてしまっても、単純に自己否定で終わるのではなく 、そこからどう変えていくべきか 考えて弱さを克服 していくなんて…!
それでは、時に悔しい思いをしたりしながらも、経験を重ねたこれまでの2年間で大使として最も頑張ったと胸を張って言えること はありますか?
一番頑張れたなと思うのは、2021年模擬国連ニューヨーク大会(オンライン実施)。
今までで一番リサーチに注力し、さらにそれを本番でアウトプットできた 大会となりました。
2021年NY大会(オンライン開催)では、神戸市長・久元氏と対談も。
この時、神戸市外大模擬国連コミュニティはキューバ共和国の大使団として参加。私は新人の1年生とペアでNPT(核不拡散条約)の大使を担当しました。
100 %キューバの立場になって考え、行動に移す ためにテキトーなことは言えません。
そのため、Googleなどに加えて、2021年はじめに日本で爆発的に広がった音声重視型コミュニケーションツール・Clubhouseを通じてキューバに関わる世界中の人々の生の声を聞きにいったりとさまざまな手段で入念にリサーチ しました。
既存の方法だけじゃなく、学びの場所を常に貪欲に探っていく姿勢 に、キューバになりきってやる!という思いの強さを感じます。
しかも、今回はなんと、駐日キューバ共和国大使館の方にオンラインで外大模擬国連コミュニティに向けてアドバイスをいただけて 。キューバという国やその周りを取り巻く社会の状況をより深く理解することができたんです!
キューバ大使館のラミレス大使とフレチジャ書記官とのブリーフィングと質疑応答の様子。
貴重なご意見やデータをもとにさらに準備を進めていきました。会議では、他国との協力関係を円滑に保ちつつ担当国キューバの立場を明確にできたことにかなり成長を感じられて嬉しかった ですね。
機会を取りこぼさず 、常に向上心 を持って取り組むキーシャさんから学ぶことがいっぱいです!
いえいえ!こんなに貴重な模擬国連という成長の機会を与えられたことに感謝しかありませんし、キューバに魅了されることで視野が広がった という経験はこれからも活きてくるだろうなぁって実感しています。
試行錯誤しながらもみっちりと準備し本番に臨む という経験の蓄積が模擬国連に取り組む上での土台となっているんですね…!
さて、ここまでは来年 11 月に神戸で開催予定の模擬国連世界大会で 事務総長補佐を務めるキーシャさんがこれまで経験した苦労や歩んできた努力についてお話をうかがってきました。
後編ではいよいよ、 事務総長補佐ってどんな役割なの? といった素朴な疑問へのお返事から、模擬国連世界大会 2022 神戸大会に向けて奮闘するキーシャさんの リーダーとしての視点 や、模擬国連コミュニティの一員としての 今後の展望 まで じっくりと語っていただきます。 模擬国連に関心を持つ後輩や、神戸市外大を目指す受験生に向けた特別メッセージ も!それでは、来週金曜の配信をお楽しみに !(2021年7月2日配信の後編はこちら! )
インタビュー・文責: 国際関係学科 ゆい
キーシャさんとは大学の文化人類学の授業(今年からなくなってしまったなんて…とっても好きな講義でした)で偶然出会ってから早3年。当時からバイタリティ溢れる人だとは思っていたが、まさかここまでとは。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
鳥取市出身、国際関係学科4年、社会学ゼミに所属するショートカット女子。
小学生の頃どハマりしたのは回文づくり。座右の銘は「できるやればねばれやるきで」。